系統周波数と需給調整市場:仕組み、市場、そして実測したエネルギー消費量

電力系統は毎秒、消費されているのとちょうど同じだけの電力を発生させなければなりません。それができないとき、系統周波数は基準周波数(東日本では50 Hz、西日本では60 Hz)から偏差を生じ、一般送配電事業者(TSO)はそれを元に戻すために「アンシラリーサービス」と呼ばれる一群のサービスを調達します。2024年4月以降、その中で最も応動の速いサービスである一次調整力は、電力需給調整力取引所(EPRX)が運営する日本の需給調整市場で取引されるようになり、蓄電池はその主要な供給元のひとつになりました。

本記事では、系統周波数とは何か、需給調整市場が何を買い、なぜ作られたのか、そして一次調整力商品が蓄電池にとってどう機能するのかを解説します。そのうえで、蓄電池が一次調整力を提供するために必要となるエネルギー量を推定します。この量はリアルタイムの周波数偏差に左右されるもので、アグリゲーターにとって重要な情報です。

周波数、系統の需給バランス指標

交流系統は、ひとつの同期した機械です。系統内のすべての同期発電機は、系統の基準周波数に対応する回転速度で回っています。ある瞬間に消費が発電を上回れば、不足したエネルギーはそれらの機械の回転質量から引き出されます。機械は減速し、周波数は低下します。発電が消費を上回れば、機械は加速し、周波数は上昇します。したがって周波数は単なる技術的なパラメータではなく、系統全体の需給バランスをリアルタイムに示す指標です。

周波数を基準周波数の近くに保つのは、応動時間の異なる制御を層状に重ねた仕組みの役割です。小さく速い周波数偏差を吸収する最初の制御層は、これらの回転質量そのものが持つ物理的な慣性です。これは系統慣性と呼ばれます。より大きな周波数偏差に対しては、TSOが発電機からアンシラリーサービスを調達し、偏差を打ち消すように出力を能動的に調整させます。その幅は、数秒以内に局所的に反応する発電機の自動的な(オフラインの)調整(一次調整力)から、1時間かけて出力を再配分する給電指令所まで及びます。歴史的には、そのすべてが大規模な火力・水力発電所によって担われてきました。

実務上、周波数には許容幅が設けられています。多くのエリアでの運用目標は基準周波数の±0.2 Hz以内(北海道は±0.3 Hz)で、ほぼ常時±0.1 Hz以内に収めることが目指されています。これを超える偏差は、発電機の損傷を避けるための解列を引き起こします。下げ方向の偏差であれば、これが最悪の場合には連鎖的に停電へと発展します。2018年9月、地震で大規模な発電所が停止した後に北海道全域で起きたのがその例です。

石炭・石油・ガスといった大型の集中型化石燃料発電所が退役していくなかで、系統はこれらの各制御層について新たな供給源を必要としています。発電量に占める割合が増えている太陽光と風力は、回転質量もガバナフリー(GF)機能も持ちません。そのため、この役割はますます分散型の蓄電池によって担われるようになっており、需給調整市場はそれに対価を支払う仕組みを提供しています。

日本の系統は2つの周波数を持つという点で特異です。東京で最初に導入された発電機は1890年代にドイツから輸入されたもので50 Hzで運転され、大阪の発電機はアメリカ製で60 Hzでした。統一が検討されるようになった時点では、両系統はすでに変換するには大きくなりすぎていました。東西は合計2.1 GWの容量を持つ周波数変換所だけでつながっており、需給バランスの観点ではほぼ別々の系統といえます。

アンシラリーサービスと需給調整市場

「アンシラリーサービス」は、TSOが系統の安定を保つために調達する商品の総称です。周波数制御、電圧調整、ブラックスタート能力などが含まれます。日本では、周波数制御のための調整力は5つの商品に分けて調達されます。それぞれの商品は、電源等がどれだけ速く応動しなければならないか、そしてその応動をどれだけ継続しなければならないかで定義されています。

商品指令応動時間継続時間導入時期
一次調整力オフライン、自端での周波数計測10秒以内5分以上2024年4月
二次調整力①オンライン、負荷周波数制御(LFC)信号5分以内30分2024年4月
二次調整力②オンライン、経済負荷配分制御(EDC)信号5分以内30分2024年4月
三次調整力①オンライン、経済負荷配分制御(EDC)信号15分以内30分2022年4月
三次調整力②オンライン60分以内30分2021年4月

表1. 日本の需給調整市場の5商品。すべての商品は30分コマ単位で取引され、最低入札量は1 MW、刻みは1 kWです。現時点で調達されているのは上げ方向(周波数が低いときに供給を足す方向)のみです。LFCは給電指令所が分単位で出す出力信号、EDCはそれより遅い、コストに基づく発電所間の出力再配分です。出典:EPRX 需給調整市場の商品要件、第6版、2026年3月。

簡単な沿革

2010年代半ばまで、垂直統合されていた各電力会社は自社の発電所から自前の調整力を供給しており、市場も価格も存在しませんでした。2011年の震災後の制度改革を受けて、送配電事業者は2016年10月から年次の調整力公募を通じて調整力を購入するようになり、原則として独立系の供給者にも開かれました。需給調整市場は2021年4月1日に開設され、調整力公募をEPRXが運営する共通の広域的な取引の場へ置き換えました。導入は商品ごとに段階的に進み、2021年に三次調整力②、2022年に三次調整力①、そして2024年4月に一次調整力と二次調整力が加わりました。応動の速い商品は当初、1週間前に3時間ブロック単位で取引されていましたが、2026年3月13日からすべての商品が前日取引に移行しました。

価格には上限があります。応動の速い商品の上限価格は2024年に1 kW・30分コマあたり19.51円と定められ、前日取引への移行に合わせて2026年初めに15円へ引き下げられ、2026年9月1日からはさらに10円へ引き下げられました。その理由は下記の約定実績に表れています。市場開設からの2年間、一次調整力市場は複数のエリアでほとんどの時間、上限価格かその近辺で約定していました。

オフラインの一次調整力

一次調整力は蓄電池に最も適した商品であり、オフライン、つまりTSOの簡易指令システムを介さずに提供できる唯一の商品でもあります。蓄電池は自らの連系点で系統周波数を計測し(自端制御)、出力を自動的に調整します。市場ルールは、周波数の変化から2秒以内に応動を開始し、10秒以内に所定の出力に到達し、それを5分以上継続することを求めています。応動時間が1秒を切る蓄電池にとって、これは容易な要件です。

応動ルール

オフライン一次調整力の契約は、応動容量、すなわちΔkWのキロワット数で表されます。蓄電池は、周波数が基準周波数から偏差を生じたとき、その偏差に比例して出力を変化させ、0.2 Hz(北海道では0.3 Hz)の偏差で契約したΔkWの全量に達することを約束します。したがって1,000 kWの契約は次のことを意味します。49.9 Hzでは500 kWを放電し、49.8 Hz以下では1,000 kWを全量放電し、50.0 Hzでは何もしません。図3の左のパネルがこのルールを示しています。周波数が高いときに充電する鏡像の応動は技術的には同一ですが、現時点の日本では調達されていません。

周波数に応じた出力の変化は、蓄電池があわせて申告する基準の出力(充電側では基準値、放電側では発電計画)を基点として捉えられます。充電の定格出力を基準値とした場合、提供できる実効的なΔkWは蓄電池の出力容量の2倍に相当します。周波数偏差に対して、蓄電池はまず充電を絞ることで応動でき、最悪の場合には放電へ転じられるからです。これは「ネガポジ運用」と呼ばれ、利用可能な応動容量を実質的に倍にするため、有力な戦略になりえます。

契約は蓄電池が実際にどれだけの「エネルギー」を供給するかまでは決めないことに注意してください。それはコマの間に周波数がどう動くかに完全に依存します。本記事の後半が答えるのは、まさにこの問いです。

市場が支払うもの

入札はΔkWの数量と、1 kW・30分コマあたりの価格で定義されます。約定した入札は、周波数がどうであったかにかかわらず、コマ全体についてその入札自身の価格で支払いを受けます。市場は供給されたエネルギーに対して別途の支払いを行いません。したがって蓄電池にとって、この商品の経済性はほぼ全面的にΔkW価格の問題であり、図1は東京エリアでのその推移を示しています。なお、これが当てはまるのはオフラインの一次調整力に限られ、他の商品には別のルールと対価の仕組みがあります。

図1図1
図1. 東京エリア、オフライン一次調整力。上:月ごとの平均約定価格。全30分コマでの平均(棒)と、ゼロを超えて約定したコマのみでの平均(線)。下:約定したコマの割合。破線は2026年3月13日の前日取引開始を示します。データ:EPRX公表の約定結果。系列は東京エリアで最初の約定が出た2025年1月から始まります。

市場が立ち上がると、一次調整力サービスは需要が非常に高く、収益性も高いものになりました。東京エリアはほぼすべてのコマで一次調整力を調達しており、2025年度は92%、2026年4月以降は事実上すべてのコマで約定しています。週間取引の時代には、価格は数か月にわたって上限の19.51円に近い水準にあり、2025年度の平均は1 kW・コマあたり13.7円でした。前日取引と引き下げられた上限価格が導入された後、2026年4月から8月の平均は1 kW・コマあたり11.5円まで低下しました。1年のすべてのコマで1コマ11.5円の契約が取れれば、年間で1 kWあたり約20万円になります。1 MWの蓄電池がすべてのコマでその価格で約定すれば、年間およそ2億円の収入です。すべてのコマで契約を保持できる蓄電池は存在せず、毎日平均価格で約定できる入札者もいないため、これは予測ではなく上限値です。それでも、2024年以降、日本で一次調整力が蓄電池の収入の中心を占めてきた理由はこれで説明がつきます。

一次調整力における蓄電池の制約とアグリゲーターの課題

調整力を提供するガスタービンが燃料のある限り応動を続けられるのに対し、蓄電池は蓄えた分しか放電できません。したがって、調整力市場に入札する蓄電池は、契約期間中に周波数が要求しうる分をまかなうだけのエネルギーを確保しておかなければなりません。しかも、もともと充電計画を前提に組み立てた入札でない限り、約定したコマの中で発電販売計画から外れずに系統から充電することはできません。

素朴な答えは、最悪ケースを確保しておくこと、つまりコマ全体にわたってΔkW全量を放電できるだけのエネルギー、1 kWあたり30分で0.5 kWhを持っておくことです。しかしこれは極端に保守的です。30分間にわたって周波数が0.2 Hz低いままの系統は重大な非常事態のただ中にあり、回復するか完全に停電するかの前にそれほど長く続くとは考えにくいからです。通常の運用では、周波数偏差が0.1 Hzを超えるのは短時間に限られます。最悪ケースを確保すれば、他で収益を上げられたはずのエネルギーを塩漬けにすることになり、系統充電のない蓄電池や太陽光併設の蓄電池にとっては参加自体がほぼ不可能になります。実務上の問いはこうです。30分の一次調整力は「実際に」どれだけのエネルギーを使うのか、そして最悪でどこまで行きうるのか。

東京エリア1年分の周波数の分析

上記のアグリゲーターの問いに答えるため、東京エリアの系統周波数の実測値を2020年1月1日から12月31日までの1年分、0.5秒間隔で用いました。空のレコードと、計測の固着を示す同一値が4回以上連続する区間を除去した結果、5,420万サンプルが残り、その年の17,568コマの30分コマのうち86%を80%以上のデータ充足率でカバーしています。この閾値を下回るコマはコマ単位の統計から除外しています。

概観

図2図2
図2. 左:2020年6月10日という平常日の東京エリアの系統周波数、0.5秒分解能。右:1年分5,400万サンプルの分布。破線は±0.2 Hz、一次調整力の契約が全量応動を要求する偏差の大きさを示します。

この1年で周波数の平均は50.0008 Hz、標準偏差は0.033 Hzでした。基準周波数の±0.1 Hz以内にあった時間は99.7%です。年間を通じた最低値は49.808 Hz、最高値は50.193 Hzでした。つまり周波数は±0.2 Hzの帯を一度も外れておらず、契約した全量の応動が要求されたことは一度もありません。

周波数からエネルギーへ

すべてのサンプルに応動ルールを適用します。契約ΔkWに対する割合としての必要放電量は、50 Hzを下回る不足分を0.2 Hzで割った値で、1で頭打ちとし、周波数が基準周波数以上のときはゼロとします。この割合を30分コマごとに平均し、0.5時間を掛けると、そのコマにおける契約1 kWあたりの供給エネルギーがkWh/kWで得られます。これは実際のエネルギーマネジメントシステム(EMS)による制御の簡略化であり、不感帯も変化速度制限もない瞬時の線形応動を仮定しています。エネルギーをわずかに過大評価する方向であり、調整力の容量設計にとっては保守的な側です。

図3図3
図3. 左:応動ルール。周波数偏差に対する、契約ΔkWに占める放電の割合。中:典型的な30分間(2020年10月2日 4:00)における必要放電量。右:年間で最も需要の大きかった30分間(2020年3月23日 8:30)における同じもの。最悪のコマでさえ、応動が契約容量の半分を超えることはまれで、平均するとその4分の1程度でした。

コマあたりのエネルギー

契約1 kWあたり・30分コマあたりのエネルギーkWh / kW
平均0.032
中央値0.032
90パーセンタイル0.045
95パーセンタイル0.050
99パーセンタイル0.063
99.9パーセンタイル0.083
最大(2020年3月23日 8:30)0.118
理論上の最大(30分間の全量応動)0.500

表2. 一次調整力1 kWが30分コマで放電するエネルギー。東京エリア、2020年、データ充足率80%以上の15,062コマが対象。

図4図4
図4. 左:年間を通じたコマあたりエネルギーの分布。右:同じデータを超過確率曲線として、ある量を超えて必要としたコマの割合を対数目盛りで示したもの。

一次調整力の典型的な30分間が消費するのは1 kWあたり0.032 kWh、理論上の最大の16分の1で、分布は比較的狭い範囲に収まっています。99パーセンタイルは平均のわずか2倍で、年間で最悪の30分間でも理論上の最大の4分の1に達しませんでした。1,000 kWの調整力を持つ蓄電池でいえば、平均でコマあたり約32 kWh、年間最悪のコマで118 kWhということになります。

日変化・季節変化に有意なパターンはない

図5図5
図5. 時間帯別(左)と月別(右)のコマあたりエネルギー。各グループに属するすべてのコマの平均、99パーセンタイル、最大値。

データは時間帯や季節への有意な依存を示していません。コマあたりの平均には一貫した日内の形が見られず、2020年のどの月でもほぼ同じで、年間で最悪のコマは1日の中でも1年の中でも散らばっています。容量設計の目的では、一次調整力のエネルギー需要はどの時刻でもどの月でも同じとして扱うことができます。

連続するコマの相関はどの程度か

蓄電池が単一の30分だけに約定することはまれで、契約は通常、連続する複数のコマにわたって保持されます。そのときエネルギーの確保にとって重要になるのは、需要の大きいコマの後にまた需要の大きいコマが来やすいかどうかです。

図6図6
図6. 左:コマあたりエネルギーの自己相関、ラグ1コマから12コマまで。右:連続して約定した1コマから6コマのブロックにわたって必要となる累積エネルギー。平均、99パーセンタイル、99.9パーセンタイル、最大値を、1コマ0.0525 kWh/kWの直線と対比して示しています。

持続性はあるものの、それは長続きしません。あるコマと次のコマの相関は0.38で、およそ4時間を過ぎると事実上ゼロになります。その結果、ブロックにわたって必要となるエネルギーはブロック長にほぼ比例して増える一方、極端値の伸びはそれより緩やかです。6コマ、3時間のブロックが単一コマの最大値の3.4倍を超えて必要としたことはありませんでした。

連続コマ数平均99パーセンタイル99.9パーセンタイル最大
1(30分)0.0320.0630.0830.118
2(1時間)0.0640.1140.1490.178
3(1.5時間)0.0960.1630.2070.253
4(2時間)0.1290.2080.2580.320
6(3時間)0.1930.2940.3590.396

表3. 連続するコマのブロックにわたる契約1 kWあたりの累積エネルギー。東京エリア、2020年。

一次調整力に参加するアグリゲーターへの示唆

蓄電池の容量設計にとって、次の3点が導かれます。

  1. 理論上の最悪ケースは、実務上あまりに保守的すぎます。 1,000 kWの調整力と2,000 kWhの蓄電容量を持つ蓄電池が3時間のブロックに約定した場合、年間最悪でも使用量は400 kWh、容量の5分の1です。全量放電のケースに基づく容量設計のルールは、何の利益もないまま蓄電池の大半を遊ばせることになります。
  2. エネルギーはΔkW価格に比べて安価です。 スポット市場の電力価格を1 kWhあたり15円とすると、調整力1 kWが典型的なコマで放電する0.032 kWhの価値は約0.5円で、2025年から2026年の東京エリア市場における1 kW・コマあたり11円から15円のΔkW価格と対比されます。往復効率の損失と蓄電池の劣化を織り込んでも、このサービスのエネルギー側のコストはΔkW側が稼ぐ額の数パーセントにとどまります。蓄電池にとって一次調整力の価値は、供給する電力そのものではなく、待機していることにあります。
  3. 分布は安定していますが、裾には注意が必要です。 需要の大きいコマは予測できず、平均の数倍を引き出すことがあります。年間最大値が現れたコマの前後は、特筆すべきもののないコマでした。平均を前提に計画を立てれば、上乗せの余裕を確保しない限りこの裾に足をすくわれますし、他のエリアや他の年では裾がさらに厚い可能性もあります。九州エリアで稼働中のある蓄電池から得られた2025年から2026年にかけての8か月分の実測データでは、約定コマにおける放電量の中央値は1 kWあたり0.031 kWhと東京の数値とほぼ一致していますが、裾はより厚く、99パーセンタイルは1 kWあたり0.13 kWhでした。本分析の99パーセンタイルに上乗せの余裕を持たせるのが妥当であることを示唆しています。

当社の最適化・入札アルゴリズムは、EPRXへ入札する際にこれらの要因を自動的に織り込み、約定したサービスを蓄電池が提供できなくなる確率を最小化します。織り込むのは次の要素です。

  • 一次調整力による想定放電量
  • 蓄電池の物理的な制約
  • JEPXスポット市場への同時参加
  • 太陽光併設の蓄電池であれば、太陽光の発電量見通し

エネルギー不足や蓄電池の停止が見込まれる極端なケースでは、Tensor Cloudが該当するコマについて自動的に代替不可申請を行います。

本分析の限界

  • 本分析は2020年という単一の年に基づいており、この年にはパンデミックによる需要減少の時期が含まれます。大規模な電源脱落があった年であれば裾はより厚くなったはずです。
  • 東京エリアのデータのみを用いており、西日本の60 Hz系統や±0.3 Hzの要件を持つ北海道は挙動が異なります。
  • 応動モデルは不感帯も変化速度制限もない理想的な瞬時ドループであり、商品要件に近いものではあるものの、特定のEMSの実際の挙動とは異なります。
  • データ不足で除外した14%のコマについては、欠測がランダムかどうかを確認せずに除外しています。
  • 図1の市場データは約定価格であり、入札者自身の収入は自らの入札価格と約定の有無に依存します。

結論

系統周波数を狭い帯の内側に保つことには、常に速い調整力を層状に重ねた仕組みが必要でした。自由化以前、それは大型回転機のGF機能から無償で得られていました。それらの電源が退役していくなかで、日本は蓄電池をはじめとする電源等からこの調整力を買うための市場を築き、蓄電池が量的に参入してくるのに合わせてルールと上限価格を調整し続けています。

オフラインの一次調整力は蓄電池に理想的に適した商品です。必要なのは速く、局所的で、自動的な応動だけであり、対価はエネルギーではなく待機していることに対して支払われます。市場ルールが答えを与えていないのは、その待機がどれだけのエネルギーを必要とするのかという点であり、東京エリアの1年分の周波数データはこれに明確な答えを出しています。調整力1 kWが典型的な30分間に放電するのは約0.03 kWh、0.06 kWhを超えることはまれで、0.12 kWhを超えたことは一度もありません。これは、コマ全体にわたる仮想的な全量応動の4分の1未満です。避けるべき時刻や季節はなく、需要の大きいコマが長く連なることもありません。蓄電池は、理論上の最悪ケースではなくこの分布の裾に基づいて余裕を確保しておけば、エネルギーの大半を他の用途に振り向けながら、安全に調整力を保持できます。

参考文献と注記

  1. 電力需給調整力取引所(EPRX)「需給調整市場の商品要件と取引スケジュール」第6版、2026年3月13日。商品一覧、最低入札量、応動時間、前日取引のスケジュール。
  2. EPRX「需給調整市場かいせつ資料」第2版、2026年4月。
  3. EPRX「需給調整市場とは」eprx.or.jp/outline。2021年4月1日の市場開設と商品の段階的導入。
  4. 経済産業省「需給調整市場について」制度検討作業部会、2022年12月21日、2024年4月22日、2025年10月29日、2026年1月23日の各資料。2016年10月からの公募の経緯、商品の導入時期、2026年の前日取引への移行と上限価格の引き下げ。
  5. EPRX「需給調整市場のΔkW上限価格について」2024年9月30日および2026年7月30日の通知。19.51円の上限価格と、2026年9月1日から適用される10円の上限価格。
  6. OCCTO「一次調整力における供出可能量の考え方の見直しについて」第49回 需給調整市場検討小委員会、2024年。0.2 Hz(北海道は0.3 Hz)の偏差に対する10秒以内の全量応動。
  7. 一般送配電事業者10社「現状のGFおよびLFCの運用について」OCCTO 作業会、2020年9月。±0.2 Hzおよび±0.3 Hzの周波数目標と±0.1 Hzの目安。
  8. 系統周波数データ:東京エリア、2020年1月1日から12月31日、0.5秒分解能、6,320万レコードのうち5,420万レコードが利用可能。タイムスタンプは日本標準時として解釈しています。
  9. 一次調整力の価格:EPRX公表の東京エリアの約定結果、30分コマ単位、2025年1月から2026年8月。
  10. 日本の2つの周波数と周波数変換所について:Japan Times「Japan’s incompatible power grids」2011年7月19日、およびOCCTOの東京中部間連系設備に関する広域系統整備計画。